2010年6月20日日曜日

戦争気分 [ M*A*S*H ]

銃声のない戦争映画があった。そもそも敵国の兵士が登場しない戦争映画、ロバート・アルトマン監督の[M*A*S*H](1970年公開)は野戦病院を舞台にした(ボクの好きな)反骨パロディだった。20世紀FOXの作品なのに、勇猛果敢なヒーローが活躍して国威発揚を意図する戦争アクションというハリウッドの映画スタイルそのものに噛みついている。テント張りの兵舎や手術室は雑然と散らかっていて道路はいつもヌカるんでいる。白衣や軍服姿もヨレヨレである。酒に溺れナースを押し倒す。規律は破戒されて従軍神父も堕ちていく。野戦病院の医師や看護婦たちは正気を保つために狂気に走ったのだった。なんだこの世界は、ボクは[M*A*S*H]の破天荒に無垢なるヒューマニズムを観た。首から血が噴き出したり、ノコギリで腕を切り落としたり、内臓をコネクリマワシたり、手術室の様子は厳格にリアルある。オペの最中、医師たちはジョークを飛ばし合い卑猥な会話を延々とづけているといった現実主義な表現のハシリだったのだ。(通常でも外科医は集中力を保つために軽妙なオシャベリをしながらオペを行う) ロバート・アルトマン監督は言う。「野戦病院そのものが低俗である。負傷兵を治療してまた戦場へ送り出す、こんなに低俗な行為はない。映画は現実を写したに過ぎない」と。

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