2010年6月20日日曜日

男ディズム [ギャンブラー]

腕利きシェフの料理のように腕利き監督がつくった映画にはコクと香りがある。良質な映画をたくさん食べるとカラダによいと思う。シネマは血となり肉となるのだ。生きる糧にもなるぞ。中には盛りつけ上手なマガイモノも混じっているから気をつけよう。よく噛んで味わえば(その違いは)ワカルよ。ロバート・アルトマン監督が[M*A*S*H]の次に撮った[ギャンブラー](1972年公開)はオーガニックな西部劇だった。森を切り開き伐採した木材を使って西部の町を再現した。こぢんまりした小さな町だけど教会も飲み屋も売春宿もあって、真ん中に河が流れている。125人の住人役とヤギとロバとイヌとスタッフは再現されたこの町に住み込んで、この特別な町の中だけで一本の映画を撮りあげた。開拓時代の西部の町のリアルな息吹(切迫した生存本能)は猥雑で狡猾で寂寞でとってもシネマチックだ。山頭火のウタのようなザックリ感が魅力のアルトマン式を堪能する。映画スター(ウォーレン・ベイテイとジュリー・クリスティ)もアルトマン式では星としてではなく開拓民として地べたで輝いていたよ。アルトマン監督と(サッカーの)オシム監督はボクの中で同じ引出にしまわれている。

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