2010年6月21日月曜日

死んじゃあいけない [風のかたち]

インサートカットに主張がある映画監督、伊勢真一さんの新作ドキュメンタリーを試写会で観てきたよ。
インサートカットというのは挿入場面のこと。シーンとシーンを橋渡しするための風景描写であったり、ストーリーに割り込んでイメージを喚起させるためにも使う。握りしめられた手紙のアップなんてのもインサートカットだね。デビット・リンチのような特異な監督になると本筋のカットとインサートカットの区別がなくなっちゃうんだ。夢幻的な作品世界にマナーは要らないとも言えるね。伊勢真一監督のインサートも心象風景だったり超現実だったりしてカッチリ収まらない浮遊感が小気味よいよ。
その伊勢真一監督の新作[風のかたち]には、[小児ガンと仲間たちの10年]というサブタイトルが付いているから、概要は察することが出来るね。でも人間の推測がいかに限定的であるかということも思い知らされるよ。ある小児科の先生の活動記録でもあるんだけど、医学のお話ではないんだ。先生はまずお遍路姿で登場するし俳句を詠んだりキャンプファイヤーで泣いたりするよ。治療中の小児ガンの子供たちに囲まれて、先生はとてもウレシそうなんだ。悲しい映画ではないんだよ。子供たちにとってのガン治療はとても厳しい現実だということも映画は伝えてくれる。でも、子供たちのまなざしは輝いているね。ウンウンと何度も何度も頷いてオシャベリを聞いてくれる仲間たちがいるからね。照れて黙っていてもそっと肩を触ってくれる大人の人もそばにいてくれるしね。テレビでは伝えることが出来ない大切なテーマを、この映画は描いているんだ。医学的でも道徳的でも経済的でもない、大切なテーマがあるということがテーマだね。
子供の病気を治すのは誰だろうって、どうすればいいんだろうって、考えてみたことありますか、ボクはなかったし、考え方がわからなかった。病気を治すのは医学だけではないらしいよ。
映画は人生のインサートカットだ、と叫んでおくぞ。

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