2010年6月21日月曜日

ペアでワンセット [天使と悪魔]

予告編ではミステリーアクションだったけど本編を観たらヒューマンサイコドラマだったロン・ハワード監督の[天使と悪魔](2009年公開)。
[ダ・ヴィンチ・コード]の続編という触れ込みだったけど、今回はダ・ヴィンチもモナリザも出てこない。大学教授役のトム・ハンクスが主役ということで前作と繋がっている。オドレイ・トトゥも登場しない。(残念) 
欧米には秘密結社という組織があるんだね。よく知らないボクたち(ニッポン人)には秘密結社といわれても、少年探偵団とか科学忍者隊とかアパッチ野球軍とかトンチンカンな連想しかできない。でも、映画の冒頭でトム・ハンクス教授がスゴク手短に秘密結社ガイダンスをしてくれるのでストーリーにはついて行ける。それに、今回のテーマが謎の秘密結社にあるのではないからなのだ。思わせぶりな象形文字とか無駄な予告殺人も出てくるけど、それらは「アッソウ」という程度に観流しておいてよいヨ。トップシーンの加速器実験室で発生する反物質も神の素粒子と呼ばれるけど、これは伏線的要素だから、原理が理解できなくても平気なのだ。余談だけど、ボク個人的には[小林・益川理論の証明](立花隆/朝日新聞出版)は読んでみたい。ノーベル物理学賞の受賞で世に知られた小林先生と益川先生の研究によって、何もないところに物質が忽然と現れるという現象が証明されたらしいのだ。「何もないところに物質が忽然と現れるよ」と昔から言っていたのは神だよね。「光あれ」とか言って全宇宙を創造したとよく売れている本にも書いてあるらしい。そんなこんなで、この反物質というのが映画の中で神の素粒子と呼ばれている。で、最新物理研究室の加速器チューブをものすごい勢いで突進していく素粒子的主観移動のトップシーンから始まるという映画の仕掛けは、音楽も荘厳でノッケからドォーと世界観に飲まれるという点で巧妙な出来なんだ。五角形の星のシンボルマークに意味を持たせながら謎を解いていくストーリーと、新ローマ教皇選出の場面がパラレルして心理ドラマを仕立てているけど、これはこれ見よがしな技巧的必要悪という感じ。 ハリウッド映画特有の表現手法だから別に批判はしないし映像表現のお作法として勉強になる。前置きが長くなっちゃったけど、それよりも今回の作品のテーマは「科学と宗教について考える」なんだよ。ガリレオ裁判の話もエピソードとしてピヨっと出てくるけど、科学の急激な進歩は人間社会に幸福をもたらすのか、という大きな課題が投げかけられちゃうんだ。直接言及してないけど、だぶん科学力による原子爆弾の発明も示唆しているね。できちゃえば(殺人兵器としてでも)使っちゃうのが人間の愚かさだから、人間ってそういうもんだから、科学の進歩は急がずノンビリやりなさいというのがカトリックの態度なのだと、登場する枢機卿は言う。ここらあたりがポイントなのだね。題名の[天使と悪魔]とも呼応してくるでしょ。ちなみに反物質には必ず対なる物質が(宇宙のどこかに)いて、反物質とペアの物質が(偶然にも)出会うと消滅してしまうんだって。忽然と現れた物質だけど、また忽然と消えることもある、ということ。いいねえ、こういう話、意味深だねえ。さあ、キーワードが並んだぞ。
[反物質vs物質] [科学vs宗教] [天使vs悪魔] 。
これが、この映画が提示する考えるべき課題というわけだ。2時間18分を1時間50分くらいに感じさせる軽妙なストーリーテリングで神妙なテーマを描いてくれたぞ。さあ、みんなで考えよう。
そういえば、東洋には陰陽五行説っていうのがあるね。

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