2010年6月20日日曜日

相似形の時間 [ディア・ハンター]

アコースティックギターのあまりにも甘い調べがプロローグから涙を誘う。運命といってしまえばそれまでだけど人生はママナラナイから、悲しみの予感をこんな風に(朴訥に)示すなんてマイケル・チミノ監督はタダモノではない。映画[ディア・ハンター](1979年公開)では戦争も日常のヒトコマだった。悲惨だし不条理だし非人道的だけど戦争はアル。ワタシたちたちにはどうすることもできないの、人生にはイイこともあるしワルイこともあるのよ、という意味の小さな微笑みをリンダ(メリル・ストリープ)は浮かべた。まあイッパイやりながらオシャベリでもしよう、ニックに乾杯だと杯を上げたのはマイケル(ロバート・デ・ニーロ)。ニックはベトナムから帰らなかった親友。クリストファー・ウォーケンが無口な青年ニックを演じた。ニックはこの映画のシンボルだった。マイケル・チミノは出来事のひとつひとつをトップリと時間をかけて示す。説明しているのではなくて植え付けているからだ。やがて芽が出て穂が揺れる。映画[ディア・ハンター]はナイーブを奨励し警戒していた。

0 件のコメント:

コメントを投稿