2010年6月20日日曜日

風が吹きヌケル家 [鏡]

催眠療法のシーンがテレビ番組であることを示すために背景の壁にマイクブームの影をあえて映していたアンドレイ・タルコフスキー監督の[](1980年日本公開)は他にもいろいろなコトを映している。鏡は角度を変えれば違う風景がウツル。催眠療法の青年は吃音が治って「私は話せます」とキッパリ言い放つ。これがファーストシーン。そしてコツンとタイトルが出る。[ЗЕРКАЛО]。音楽は礼拝堂のイメージ。([惑星ソラリス]のテーマもこの感じ) 遠くまで見える風景はタルコフスキーのシンボル。風が吹いて誰かがやってくる。オンナは待っているけど期待していない。背中が既に泣いている。振り向いた。これ以上悲しい微笑はない。雨が降ってきた。雨なのに火事が起こる。小屋が燃えている。オンナは井戸に腰掛けて静かに見物する。部屋の中にも雨は降る。校正係のオンナは誤植に気づいて慌てふためく。取り乱して手がつけられない。「あなたは自分勝手だ」と同僚に言われる。「だから結婚もウマクいかないのよ」と言われる。自分勝手でいろいろなことがウマクいかない人って、どれくらいいるのだろう。ボクもその内の一人だ。オンナはシャワーを浴びるが水が出ない。オンナは笑う。悲しいときは笑うのだなと思う。家に帰ってきたオンナは誰かと会話を続けていた。ずっと言い合いをしている。でも相手の姿は映らない。声だけが聞こえる。実体のない人物と会話を続けているのだ。少女時代の回想シーンではフラメンコを踊ってぶたれる。はしたない踊りだと。音楽シーンになる。男が戦争に行く。戦争は男がするコトだ。森から風が吹いてくる。霊気を感じる。子供は俯いている。男は拗ねている。オンナは嘆いている。赤ちゃんは眠っている。鶏の首を鉈で落とす。これは食事の支度である。オンナは(魔術のように)宙に浮く。風が家の中に入ってくる。気がつくと家は壊れていた。全壊である。さあ、出かけましょう。何事もなかったように、母は歩き始める。

0 件のコメント:

コメントを投稿