2010年6月20日日曜日

ソラに隠されている事 [シェルタリング・スカイ]

経済的安定の情緒不安定は都市生活者から生きるヨロコビを奪ってしまう。「空の向こうは闇である」と原作者のポール・ボウルスは言った。映画[シェルタリング・スカイ](1990年公開)はサハラ砂漠を舞台に欧米富裕層の怠惰を耽美に描いていて、音楽も坂本龍一だし撮影もヴィットリオ・ストラーロだし、ボクはヘンな気持ちを起こしたのだった。ベルナルド・ベルトリッチ監督は[ラストエンペラー]で時代的見地から見た小さな人間たちのアイラシイ奮闘を描いたけど[シェルタリング・スカイ]でも人間の様子は滑稽だった。トラベラーの夫婦は関係の修復を望んでいるように見せても本気ではない。夫(ジョン・マルコヴィッチ)は腸チフスにかかってアッサリと死んでしまう。妻(デブラ・ウィンガー)は徘徊中にキャラバンに拾われて砂漠の民に身を委ね精神を放棄する。砂粒の混じった黄色い風が真横に吹き付ける起伏の地平線に真っ青な月だけが冷たく睨んでいた。でも砂漠の民は空を仰いだりしない。自分の手足の方が大切なのだ。地球は闇にツツマレテイル。

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