2010年6月20日日曜日

イカレたイカリ [地獄の黙示録]

どういう精神状態でこの映画を撮ったのだろう。何が言いたいのだろう。映画[地獄の黙示録](1980年公開)を観た二十歳のボクは得体の知れない魔物に出会ってしまってウロタエたのだった。サイゴンのホテルのベッドのある部屋で酔っぱらって鏡を殴り血だらけになった兵士に隠密司令が下る。そして戦場のジャングルの河をただひたすら遡上するクレイジーな旅が始まった。壮絶で馬鹿馬鹿しい常軌を逸した場面が次々に平然と登場してボクはメンクラッた。これはただの反戦モノではない。では何か。ワカラナイ。まったくワカラナイ。?の土砂降りだった。河の上流のジャングルの奥の古代遺跡のような悪魔的なユートピアをボクは否定できなかった。独善と残虐が支配するこのユートピアはたぶん踏み絵なのだろう。ボクは踏み絵を踏むことができなかった。ただ感心して眺めていた。魅入られていたと言ってもいい。これが映画のチカラだ。2001年に公開された特別完全版は53分追加されて202分になっていた。四十歳になったボクはフランシス・フォード・コッポラにもう一度殴られた。

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