2010年6月21日月曜日

brother spring, [重力ピエロ]

(これは去年の話です)六月にはいってそろそろ梅雨入りなのかしらと空を見上げる今日この頃。
きのうは森淳一監督の[重力ピエロ]を観たよ。ホントウに春が二階から落ちてきたよ。びっくりしたねえ。
原作の伊坂幸太郎さんは「低温のロックンロールを描きたかった」らしい。パンフレットにそう書いてある。さすがに文章家だねウマイ言い方をするね。映画もその通りの印象だったよ。低温のロックンロール。観ているうちに静かに興奮するよ。映画館のシートに座っていながら腹筋に力がはいるよ。知らないうちに歯を食い縛っていたよ。たぶん複雑な感情が肉体にアラヌ指令を出すんだろうね。映画館の中でボクの肉体は質量を失ったよ。そのように感じられたよ。
家に帰って、さっそくボクはパートナーに映画の話をするね。パートナーとはもう十五年くらい一緒に暮らしている。懸命に[重力ピエロ](2009年公開)の説明をしているボクの姿をマムマムと笑いながらパートナーは眺めるよ。そして「ワタシも観たい」と言うよ。ウレシイね。週末には二人で有楽町のシネカノンに行くよ。
ストーリーはシンプルなんだ。普通の家族の肖像だね。日常の生活風景と言ってもいいよ。そこがいいんだね、普通がいいんだね。普通の母さんと普通の父さんと普通の兄弟のイトナミの様子。自動車がロボットに変身したり右足にマシンガンを埋め込んだりはしないよ。学校に桜が咲いたり雪道でスタックしたりという誰でも経験する出来事がエピソードの入り口なんだ。とても身近なオハナシなんだよ。そこがいいんだね。そして、日常の中に、どこからか風が吹いてきて、波が立つよ。波って境界面に起こる現象なんだ。海では、水と空気の境界面に波が起こるね。性質が違うモノが接すると波が立つということだよ。普通の家族の普通の生活のなかに性質の違う風が吹き込んだ場合にはどんな波が立つのだろう。例えばこんな感じ、というオハナシなんだ。普通で身近だから肌に刺さるよ。痛いよ。ツボに決まって気が巡るよ。なんだかわからなくなって涙が出るよ。前世を思い出すかもしれないよ。
なんたって、ホントウに春が二階から落ちてくるんだからね。

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