2010年7月23日金曜日

遠くの声は響いて聞こえる [パラダイス・ナウ]

[パラダイス・ナウ](2007年日本公開)は「パレスチナ人監督ハニ・アブ・アサドがイスラエル人プロデューサーと手を組み、ヨーロッパ各国との共同製作というかたちで作りあげた作品である」と配給ホームページには書いてある。2005年ベルリン国際映画祭で青い天使賞をもらった。
舞台はイスラエルのヨルダン川西岸地区。パレスチナの人々が暮らすエリアだ。主人公のパレスチナ青年は10歳の時に、父が密告者として処刑された。「密告者の罪」とは何か。ニッポンでぽけっと暮らしているボクにはわからない。
成人した青年は(幼なじみの友人と共に)自爆テロの実行者に抜擢される。これは名誉なことらしい 。二人は決行のために目的地であるテルアビブへと向かう。だけど出来事は裏目裏目に展開する。それでなくても切ない道行きなのに、どうしてこんなことが起きちゃうんだということが起こり続ける。筋書き通りには事が運ばないんだ。これがパレスチナという現象なのか。
生まれてこの方、ずっと、抜け出すことのできないパレスチナキャンプでの重圧生活だった彼ら。どんづまりの行き止まりの立ち往生の渇望の淀みの溜まりが、粘りのあるヤルセナサになって肌にまとわりついてくる。
ナニゴトも気の持ちようだなんて誰が言うのだ。そうかもしれないけど、そうじゃないかもしれないじゃないか。今日の次に明日が来ることを疑いながら生きている人々。一万年ってどのくらいの長さかなんてボクにはわからない。愛しい人の呼ぶ声が今の彼らには届かないんだ。なんとかしてほしいけど、なんともならない時間が一万年あったんだ。

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