2010年7月5日月曜日

ホットする石 [キサラギ]

ずっと貸し出し中だった話題の日本映画[キサラギ](2007年公開)をやっと借りてきた。
簡易的な舞台セットとパタパタ演技が深夜ドラマのノリで、低予算を素直に暴露していて高感度バツグン。
C級アイドル[如月(きさらぎ)ユキ]の一周忌に五人の熱烈ファンは場末の雑居ビルのペントハウスに閉じこもった。とにかく追悼のオシャベリに興じる。痔の薬のCMに似ている写真ぽいキッチュな回想シーンも要領がヨイ。ここぞというタイミングに挿入されて娯楽度タカシ。喪服姿の男五人が狭い部屋に閉じこもって延々とグタグタ言い合うワンシチュエーションドラマだけど、[如月ユキ]の死因を推理する展開は探偵モノの様相で、掛け合い漫才というかコントというか会話のテンポにビートが効いているから強引な筋立てもエネルギッシュな作風だと納得する。
五人の熱烈ファンはそれぞれに事情を抱えていて現実社会ではパッとしない連中のようで自分の殻に閉じこもっている。でも誰だって自分の殻の中であがいているのだろうし、理不尽がグイグイと迫ってくることだってそりゃ(みんな)あるだろう。いや理不尽は日常の石ころだ、そこらに平気で転がっている。そんな生活者にとってアイドル[如月ユキ]は天使だった。天使の微笑みだけが生きる糧だった。悲しいけどソレが(とっても)現実な男が五人。それもいいじゃないか、アイドルに夢中になって何が悪いのだ、という背水の熱気が映画に充満してハチキレそうだ。心に穴ボコ空けたまま気力で生きているたくさんの普通の人々が[キサラギ]の切なく燃えるメッセージに感涙していると思う。ボクも泣いた。

0 件のコメント:

コメントを投稿