2010年7月11日日曜日

誰のためにエリーゼのために [エレファント]

どのくらい時間が経てば昔話になるのだろう。きのうの出来事は昔話だろうか。去年はどうだろうか。十年前はどうだろうか。一万年前はどうだろうか。百四十億年前はどうだろうか。
1999年に起きたコロラド州コロンバイン高校銃乱射事件をモチーフにした映画[エレファント](2004年公開)は沈着冷静な映画だった。犯人も被害者も目撃者も、淡々と歩いている。興奮しない。ただ一般的な時間が流れていく。いつも通りの小さな出来事が繰り返される。でも今日は何かが少しだけ違うような気がする。そんな一日だった。
生きている時間を確かめるように生徒たちは校内を歩く。雲が流れる。オシャベリをする。歩く。ピアノが聞こえる。雲が流れる。時間が重なる。歩く。撃つ。撃たれる。倒れる。雲が流れる。ピアノが聞こえる。
カメラは誰かの歩く姿に寄り添ってついていく、校庭を図書館を長い廊下を、ずっとついていく。ガス・ヴァン・サント監督によれば観客が考える時間をつくったという。でもボクは考えなかった。考えないでポケラーと観ていた。
ベートーベンのピアノ曲を弾いているのは無差別殺人の犯人だ。こないだ生まれたばかりの高校生だ。たぶん何も考えないで弾いている。

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