2010年7月12日月曜日

たたかうお兄さん [ボーン三部作]

[ボーン・アイデンティティー](2003年公開)[ボーン・スプレマシー](2005年公開)[ボーン・アルティメイタム」(2007年公開)3部作によって、相互追跡という物語形式が定着したよ。CIAに復讐する元スパイのジェイソン・ボーンと、それならばジェイソン・ボーンの行動をキッチリ探査するCIAの両方に、映画の追跡カメラが貼り付いたからね。
CIAが巨費を投じて育成した知的スナイパー・ジェイソン・ボーンにマッド・デイモンをキャスティングした時点で作品のテイストは決まったんだと思う。ポーンの人柄と境遇に同情できなかったら成立しないでしょう、このシリーズは。ジェイソン・ポーン(マッド・デイモン)のやさしくて切ないマナザシが、諜報員の孤独を示すし、逃げているのか追いかけているのかわからなくなっちゃうストーリー展開は理念なき曖昧社会の全身像をムッチリと映しているね。007のような非情で色欲なスパイ映画はウソっぽいから、隣のお兄さんが実はスゴイ人でしたっていう親近感路線に観客が集うんだね。
失われた記憶を取り戻すという典型的な筋立ては、今ならば自分探しと名付けられて、人生に迷っている(多くの)人々の共感を得るのだろうと思う。でも、自分探しって危険な行為のようだから気をつけてね。ジェイソン・ボーンもそこには充分気をつけているようだったよ。でもハマッちゃったんだ。
ボクはこの三部作を逆順に観た。[アルティメイタム][スプレマシー][アイデンティティ]と三部作を321と見戻ったんだ。クリストファー・ノーラン監督の[メメント]を体験したときのようなクラクラする時間の錯綜感が心地よかったよ。時系列と脳内イメージの混線もボーンシリーズの表現コンセプトだと思うから、こういう見方も(結果的に)正解だったね。
もはや諜報機関だけが情報を占有しているのではない。ボーンなんてグーグル検索で国家組織と対等に立ち向かっちゃうんだ。チカラより機転(センス)が有効だというリアリティ(直感と体験)への信頼がこの映画の好感度だと思うな。アタマとカラダとインターネットで世界は構成されているんだよ。

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